はじめに
2025/8/5にリリースされたProxmox VE 9.0では、ベースOSの更新をはじめとして複数の新機能が追加されています。本記事では、特にすぐに試せそうな変更点を実際の環境で検証し、改善点を解説していきます。
Proxmox VE 8からのアップグレード手順については別記事で解説しています。
Proxmox VE 9.0の主要な変更点
- ベースOS:Debian最新リリース Debian 13(コードネーム Trixie)を採用
- SDN:OpenFabricやOSPFプロトコルを利用した動的ルーティングであるファブリック機能の追加
- HA (High Availability) 機能:Node/Resources Affinity設定機能の追加
- Web UI:スマホ表示の最適化
- ZFS:ダウンタイム無しでのRAIDZプールへのデバイス追加機能
本記事では、この中から青字の項目に絞って紹介します。
ベースOSのDebian 13 (Trixie) への更新
Proxmox VE 9.0では、2025/8/9にリリースされたばかりの最新リリースDebian 13 (Trixie)をベースOSに採用しています。
Proxmox VE 9のリリースが2025/8/5なので、PVEの方が若干フライングしての速攻採用となっています。
Debian 13のリリースノートを見た感じでは、PVEで使う限りで大きな変更はなさそうです。注目したい大きな変更としては、2038年問題の解決(time_t ABIの64bit化)がされているようです。ただし、肝心のi386(32bit PC)は互換性維持の観点でこの変更からは除かれているようです。この変更についても、PVEは元々64bit OSなので特に問題はないはずです。
ベースOSバージョン確認
ノード上で次のコマンドを実行することでベースOSを確認できます。
cat /etc/os-release
実行結果:
PRETTY_NAME="Debian GNU/Linux 13 (trixie)"
NAME="Debian GNU/Linux"
VERSION_ID="13"
VERSION="13 (trixie)"
VERSION_CODENAME=trixie
DEBIAN_VERSION_FULL=13.0
ID=debian
HOME_URL="https://www.debian.org/"
SUPPORT_URL="https://www.debian.org/support"
BUG_REPORT_URL="https://bugs.debian.org/"
Node/Resource Affinity Rule (HA)
HA機能において、Node affinity ruleとResource affinity rulesが設定できるようになりました。
- Node Affinity Rules
Proxmox VE 8まではHA Groupと呼ばれていたもので、HAリソースが起動するノードを限定する機能です。
- Resource Affinity Rules
Proxmox VE 9での新機能で、特定のHAリソースの組に対して、
- Positive Affinity (Keep Together) : 同一のノードで起動
- Negative Affinity (Keep Separate) : 別々のノードで起動
のどちらかの動作をさせることができます。
利用例:
- Positive Affinity
- DBを動作させているVMとそれを使うアプリを動作させているVM
- ネットワークレイテンシーを最小化したいVM群
- Negative Affinity
- 冗長化されたローカルDNSサーバー
- KubernetesクラスターのMasterノード
設定方法
実際に、冗長化されたローカルDNSを実行しているサーバー(CT dns1, dns2)に対して、可用性確保のためにNegative Affinityを設定する手順を説明します。
- Datacenter → HA → Affinity Rules を選択
- Resource Affinity (下側) のAddボタンをクリック
- Resource Affinityを以下の通り設定
- Enable : チェック(有効化)
- HA Resources : 対象のリソース(VM・CT)を選択
- Affinity : Keep Together(同じノードに集約=Positive)・Keep Separate(別ノードに分散=Negative)のうち、Keep Separateを選択
Resource Affinity作成画面Resource Affinity リソース選択画面 - Addボタンをクリック
この上で、試しに設定したリソースが起動しているノードを片方落とすなどすると、停止したリソースが別のノードで起動することを確認できます。
スマホ表示の改善
Proxmox VE 9では、スマホからのアクセス時に自動的にモバイル向けに最適化されたUIが表示されるようになりました。
試しにAndroid版FirefoxアプリでアクセスしてみたところPC版が出てきてしまいダメでしたが、Chromeからアクセスすることでモバイル表示に切り替わることが確認できました。
クラスターやリソース利用状況など確認ができるダッシュボードや、VM・CTの起動停止といった簡単な操作などがスマホ表示から可能になっています。
ライブマイグレーション時のコネクショントラッキング(conntrack)の移行
conntrackがライブマイグレーション時に移行されるようになりました。これにより、ライブマイグレーションした瞬間にアクティブな接続が途切れてしまう確率が少なくなるはずです。
設定方法
マイグレーションの画面を確認すると「Conntrack state」のチェックボックスが増えていることが分かります。デフォルトでチェックボックスが入っています。

まとめ
Proxmox VE 9.0の新機能の一部を実際に検証してみました。
参考サイト
- Proxmox VE 9.0 リリースノート
- ロードマップ(Proxmox VE 9.0の新機能)
- Debian Trixie (Debian Wiki)
- Debian 13 (trixie) リリースノート